中国は共産主義国か? 資本主義国か?
中国には、選挙がない。共産党の一党独裁である。1921年7月に、中国共産党が結党し、今月で100周年である。中国共産党は今では9000万人の党となっている。1978年の改革開放路線で、市場メカニズム動き始め、国営企業を中心とした公営の政府指導という2つの原理が併存している。企業も国有企業と民間企業が併存する。78年以来、改革開放を採用し、92年の南巡講話で改革開放路線を押し進めた。巨大政党の一党支配は、中国式エリート体制を生み出している。選挙によらないということは、内部闘争が大きな要素となるということでもある。その意味での権力掌握は、強力な指導力を持つものしか政権を担えない。習近平の体制も権力掌握と第一としている。それは思想的な運動を含んでいる。
共産党の歴史では大きな失敗が2つあったと言える。一つは大躍進政策である。その経済政策の失敗で、5000万人が餓死し、毛沢東は国民に謝罪した。もう一つの失敗は文化大革命である。1981年に鄧小平は、文化大革命を否定し、「歴史的決議」を党で採択した。そして、共産主義を維持して国家の発展を共産主義という支配原理によって実現するという方針を取っている。鄧小平は、91年10月に経済の行きづまったソ連の崩壊を反面教師にするべきだと説いている。
現在も共産主義は必ずしも市民社会とは融和しないことが多くある。市民社会は資本主義社会の別名という捉え方もある。市民社会は自由な個人の集まりであるが、同時に欲望に任せた競争社会でもある。しかし近代社会が市民社会として成立したほうの支配の社会で近代的な道徳もその上に発生したという側面もある。今、我々は、中国の市民社会の疲弊と矛盾を見ておかなければならない。富、平等、人権といった市民社会的論理がどの程度実現されるかは政治体制と深くかかわってくる。
社会主義・共産主義はもともと経済的平等を目指すものであった。鄧小平が「豊かになれるものから豊かになればいい」と打ち出してから、平等の色彩は退き、富の不平等は一時的なものから恒常的なものになっている感が今ではある。中国での10万㌦超の純資産を持つ人が2021年6月で1億1341万人になり、アメリカの1億319万人を凌駕した。ちなみに日本は5537万人である。最近の「小金持ち」の急増に関しては、金融緩和のマネー流入と不動産や金融資産の価値の増加が原因であるという側面を持つ。
鄧小平は、78年に日本を訪問し、日本経済体制を学び経済成長を実現してゆく。それ以降、株式会社、証券、理財商品などの金融商品が増えてゆく。経済発展は人民元の政策にもつながっている。
中国はどのような国家体制に進むのであろうか。習近平思想は、国家体制としては指導理念となっても、共産主義の原理やマルクス主義、それを継承した毛沢東思想からはかなり異質なものでなはいだろうか。「中国の夢」は覇権主義といえるものであり、習近平氏の基本的な思想は儒教思想であって、共産主義の原理とは異質である。人権や、個人の権利や、民族の尊重を取り入れるとき、選挙制度や所得を基礎とした租税制度、経済政策の金融資本主義化という方向性が強くなっていく可能性は高い。その時、中国は資本主義化により一層、進まざるを得なくなるのではないだろうか。
習近平指導部は有力大学で思想教育を加速化している。(日経新聞 2021.10.3)習近平指導部の手法に関する反発が知識層から上がっているためである。全国37大学に付属するマルクス主義学院で「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義概論」と題した授業が始まる。精華大学・北京大学などで「習近平思想」を学ぶことが必修となる。習近平思想というのは、2017年に習氏が提唱したものである。経済力や科学技術を向上させる。2049年に社会主義現代化強国を作り上げる。21世紀半ばまでに世界一流の軍隊を建設する。人民解放軍の実力を米軍と並ぶ水準までに引き上げるといった内容である。ほとんど実質的な社会主義理論はそこにはない。
精華大の許章潤教授は、新型コロナの感染拡大の責任は習指導部の対応にあると批判した。中央党校の教授の蔡霞氏は「中国が危機的な状況から脱する最善の方法は指導者を変えることだ」と習氏の退任を主張した。企業家の任志強氏は、州指導部の行き過ぎた言論封殺が新型コロナの感染拡大につながったと非難した。蔡氏、任氏は党籍を剥奪され、蔡氏は海外移住、任氏は横領罪に問われ懲役18年の実刑判決が下った。
中国の共産主義国家体制では選挙がない。レーニンは、かつて選挙は民主主義ではないとしてソビエトという評議会での議論を重視した。中国でも代表者の合議が政治選択のみちとなっている。候補者の実績が評価の中身となる。そのことは同時に権力抗争も強烈になる。
中国の政府の人事は党の代表者会議と実績の積み重ねで選ばれる。最高機関は全国人民代表大会(全人代)で年に1回開かれる。2か月に1度開かれる全人代か常務委で任命できるようにする法改正が検討されている。首相の選出は副首相の中から選ぶのが慣例である。現在では共産主義青年団(共青団)の胡春華副首相が李克強首相の後継の有力候補であるが、習近平氏は共青団出身者を遠ざけている。吉林省の孫政才氏、湖南省の周強氏などが習近平氏の次の世代の有力者である。いずれも習近平氏より10歳ほど若い。毛沢東から数えて第6世代に当たる。
二酸化炭素の排出規制も資本主義の修正として対応することになり。党規約で「共産主義の実現」を掲げているが、その具体性は何も見えてこない。鄧小平の裕福になれるものからなればいいというのは、経済成長のための原動力であったが、それが今では恒常化しているのではないだろうか。裕福さを求めることが是とされるとき、社会主義は名目でしかない。むしろ、欧米の先進国同様、格差社会につながっていると言えそうである。
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