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7月, 2021の投稿を表示しています

世界の市場と生産の動向

【今後のサプライチェーンの見直し】   今年、2月24日、米バイデン政権はサプライチェーンの見直しに関する大統領令を出した。主要七省庁を横断する大号令で、今後のグローバルバリューチェーン(GVC=国際的な価値の連鎖)の展開を左右する。コロナのパンデミックの中で不測の時代に対する供給網の脆弱性に対処するという課題から出てきた措置といえる。さらに中国とのデカップリング(分断)経済のサプライチェーンを見直しておく必要が強くなったことも見直しの一因である。課題は、①供給網の見直し、②製品・産業の調査、③同盟国との連携などである。民間企業の進めていることと政府が見直すことの調整が重要となる。半導体、高容量電池、医薬品、レアアースが重点的対象となる。国家としての調整がその中で模索されることになるが、当面、中国とそれ以外の先進国の同盟国との種分けが政治的政策に反映すると思われる。特に中国が世界の工場となって、サプライチェーンの中で占める比重が他の先進諸国の問題となってきている。WTOの無力がささやかれ、その他の経済協定が政治的な緊張関係の中で揺らぐ可能性が大きい中で、世界の市場秩序を見直し、中国とアメリカのデカップリング(分断)という問題を視野に入れながらアメリカ経済の方向性を見定めておく必要が米政府にはある。  世界経済は緊密なつながりを持ち始めている。経済のグローバル化の中で市場とサプライチェーンは緊密に結ばれている。いくつかの例を見ておこう。 1)インドネシアにEV自動車に使う電池材料のニッケルの工場の集積が進んでいる。独化学大手のBASE、仏ニッケル精錬大手のエラメット、住友金属鉱山などがインドネシアに製錬所の建設に取り掛かっている。インドネシアはニッケルの生産で世界最大、生産の世界シェア30%である。コバルト生産も大きい。いずれの会社も2020年代半ばの稼働を目指している。  2)東京ガスとインドネシア国営石油会社のプルタミナは、液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地を2015年から建設している。  3)2011年には、ベトナムで、昭和電工が磁石廃材を利用したレアアース合金原料の生産を始めている。鉱山からレアアースを調達し、合金原料を増産する検討もしている。ジスプロシウム、ネオジムといったレアアースを鉄などと混ぜた合金である。エコカーなどのモーターに搭...

国債・財政危機・通貨

【国債発行】 新型コロナウイルス危機で新興国は、財政出動の財源をあがなおうと、国債発行を大幅に増やしている。2020年の新規発行額は前年の2倍の3兆ドル(約320兆円)に及ぶ可能性がある。中央銀行は国債購入に動く。中央銀行の独立性が侵され通貨の信認を失うリスクがある。中国をはじめとする新興国40か国の財政赤字はGDPの10.6%、3兆㌦と急激に拡大している。借り換えを含めた発行額は5兆ドル近くに膨らむ。  中国の国債市場に欧米などの海外から投資マネーが流入している。外国人の中国国債保有残高は今年2021年5月末で2.1兆元(約36兆円)と前年の同月から46%の増加である。政治摩擦が大きくなる中で、利回りの高さが人民元にマネーを引き寄せている。外国人の中国国債保有額は2016年初頭で2500億元程度であった。18年夏に1兆元を超えて今年21年に2兆円を超えた。  日本の大手生命保険会社は中国への国債への投資を始めているが欧米に比べるとそれほど積極的ではない。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も今のところ投資に慎重である。中国国債の購入増が5月末1㌦=6.35元という人民元の高値を呼んでいる。 【各国の物価、通貨為替、通貨安】  アメリカは大規模な経済対策で長期金利も上昇し、ドル高が進行した。新興国は通貨安に歯止めをかけるため利上げが広がっている。先進国は物価上昇を覚悟しながら景気を支えようとしている。ECB(欧州中央銀行)は、国債などの購入を実施している。FRBは、ゼロ金利政策を23年末まで続けることになりそうである。日銀はコロナ対策の一環で景気回復を後押しする方針である。緩和マネーは膨張し続けている。FRBの総資産は21年末に8兆7630億㌦(955兆円)に膨れ上がる見通し(現在は712兆円)である。  新興国は通貨膨張をつづけるゆとりがない。ブラジルとトルコは政策金利を大幅に引き上げた。ロシアは2021年3月19日に2年3か月ぶりに金利を引き上げた。  日銀は、ETFの買い入れを柔軟にする、銀行支援体制でマイナス金利による減収を補う。長期金利の変動幅拡大、などの方針を提示している。 【日銀資産】  新型コロナウイスルの対応による資金供給で日銀の資産が膨らんでいる。2020年12月末時点で702兆円となり、1年前より129兆円増えて...

世界の軍需産業と武器輸出

2020年の世界の総軍事費は1兆9810億㌦(217兆円)である。冷戦終局時点の1990年に比べて4割増えている。1.アメリカ、2、中国、3、インド、4.ロシア、5.イギリスで、日本は491億㌦で9位である。アメリカの国防費は、2021年度会計で、7330億㌦(約80兆1000億円)である。アメリカはステルス戦闘機の調達拡大とミサイル防衛システム強化に力を入れている。中国は1兆3553億元(約23兆2000憶円)である。 アメリカは軍備をグローバルに展開をしている。中国は東アジア中心である。さらに中国は政府会計の表れない部分も多いと見られている。艦艇の数は、中国が350隻、アメリカは300隻であるが、アメリカの艦艇は規模が大きく優れた攻撃・防御システムを備えている。高度な指揮命令系統のネットワークもあり、軍用機と水上艦、潜水艦と結びついている。 日本の軍備に関しては、岸信夫防衛相は5月、GDP1%枠にこだわらず増やす方針を示している。現在、航空自衛隊の戦闘機はF4,F15,F2の三種類である。1971年から配備が始まったF4は、老朽化のため2017年末から最新鋭のステルス機F35に切り替えてゆく。F2は艦船をミサイルで攻撃する戦闘機である。三菱重工業は生産を終え、30年以降に退役させる。F35はアメリカ、イギリス、イタリアなど9カ国で共同開発している。開発費は6兆円にのぼる。日本は国産の可能性を探るためステルス性能の試験を始めるため、2016年から先進技術実証機X2を使っている。国産戦闘機の復活が課題となっている。  同盟関係ではアメリカとの協力国が重要で、日本をはじめ、海軍力のあるオーストラリア、韓国、シンガポールがある。そしてQuad(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)の連携も強化している。中国はロシアとの合同軍事演習をしている。イランにも投資し、味方に引き入れようとしている。 武器輸出で大きな産業としているのがロシアである。アメリカは2017年8月に対ロ制裁強化法を成立させ、外国政府にロシアからの武器購入を取りやめるよう動いている。ロシアから軍事装備品を購入したとして、中国共産党の高官らへの制裁を2018年9月20日に行っている。中国中央軍事委員会で装備調達を担う装備発展部とその責任者である李尚福部長を制裁の対象としている。...

中国は共産主義国か? 資本主義国か?

中国には、選挙がない。共産党の一党独裁である。1921年7月に、中国共産党が結党し、今月で100周年である。中国共産党は今では9000万人の党となっている。1978年の改革開放路線で、市場メカニズム動き始め、国営企業を中心とした公営の政府指導という2つの原理が併存している。企業も国有企業と民間企業が併存する。78年以来、改革開放を採用し、92年の南巡講話で改革開放路線を押し進めた。巨大政党の一党支配は、中国式エリート体制を生み出している。選挙によらないということは、内部闘争が大きな要素となるということでもある。その意味での権力掌握は、強力な指導力を持つものしか政権を担えない。習近平の体制も権力掌握と第一としている。それは思想的な運動を含んでいる。   共産党の歴史では大きな失敗が2つあったと言える。一つは大躍進政策である。その経済政策の失敗で、5000万人が餓死し、毛沢東は国民に謝罪した。もう一つの失敗は文化大革命である。1981年に鄧小平は、文化大革命を否定し、「歴史的決議」を党で採択した。そして、共産主義を維持して国家の発展を共産主義という支配原理によって実現するという方針を取っている。鄧小平は、91年10月に経済の行きづまったソ連の崩壊を反面教師にするべきだと説いている。   現在も共産主義は必ずしも市民社会とは融和しないことが多くある。市民社会は資本主義社会の別名という捉え方もある。市民社会は自由な個人の集まりであるが、同時に欲望に任せた競争社会でもある。しかし近代社会が市民社会として成立したほうの支配の社会で近代的な道徳もその上に発生したという側面もある。今、我々は、中国の市民社会の疲弊と矛盾を見ておかなければならない。富、平等、人権といった市民社会的論理がどの程度実現されるかは政治体制と深くかかわってくる。 社会主義・共産主義はもともと経済的平等を目指すものであった。鄧小平が「豊かになれるものから豊かになればいい」と打ち出してから、平等の色彩は退き、富の不平等は一時的なものから恒常的なものになっている感が今ではある。中国での10万㌦超の純資産を持つ人が2021年6月で1億1341万人になり、アメリカの1億319万人を凌駕した。ちなみに日本は5537万人である。最近の「小金持ち」の急増に関しては、金融緩和のマネー流入と不動産や金融資産の価...