世界の市場と生産の動向
【今後のサプライチェーンの見直し】
今年、2月24日、米バイデン政権はサプライチェーンの見直しに関する大統領令を出した。主要七省庁を横断する大号令で、今後のグローバルバリューチェーン(GVC=国際的な価値の連鎖)の展開を左右する。コロナのパンデミックの中で不測の時代に対する供給網の脆弱性に対処するという課題から出てきた措置といえる。さらに中国とのデカップリング(分断)経済のサプライチェーンを見直しておく必要が強くなったことも見直しの一因である。課題は、①供給網の見直し、②製品・産業の調査、③同盟国との連携などである。民間企業の進めていることと政府が見直すことの調整が重要となる。半導体、高容量電池、医薬品、レアアースが重点的対象となる。国家としての調整がその中で模索されることになるが、当面、中国とそれ以外の先進国の同盟国との種分けが政治的政策に反映すると思われる。特に中国が世界の工場となって、サプライチェーンの中で占める比重が他の先進諸国の問題となってきている。WTOの無力がささやかれ、その他の経済協定が政治的な緊張関係の中で揺らぐ可能性が大きい中で、世界の市場秩序を見直し、中国とアメリカのデカップリング(分断)という問題を視野に入れながらアメリカ経済の方向性を見定めておく必要が米政府にはある。
世界経済は緊密なつながりを持ち始めている。経済のグローバル化の中で市場とサプライチェーンは緊密に結ばれている。いくつかの例を見ておこう。
1)インドネシアにEV自動車に使う電池材料のニッケルの工場の集積が進んでいる。独化学大手のBASE、仏ニッケル精錬大手のエラメット、住友金属鉱山などがインドネシアに製錬所の建設に取り掛かっている。インドネシアはニッケルの生産で世界最大、生産の世界シェア30%である。コバルト生産も大きい。いずれの会社も2020年代半ばの稼働を目指している。
2)東京ガスとインドネシア国営石油会社のプルタミナは、液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地を2015年から建設している。
3)2011年には、ベトナムで、昭和電工が磁石廃材を利用したレアアース合金原料の生産を始めている。鉱山からレアアースを調達し、合金原料を増産する検討もしている。ジスプロシウム、ネオジムといったレアアースを鉄などと混ぜた合金である。エコカーなどのモーターに搭載する高性能の磁石の基礎素材となる。廃家電や磁石工場から出るスクラップを日本で買い付けいてベトナムの工場に送り、溶媒を使ってレア―アースを回収する。
【日本の経済環境の変化】
1985年のプラザ合意は日本の中小企業に大きな転換をもたらした。急激な円高で輸出産業が頭打ちとなり、日本経済の強さは構造転換を迫られた。海外への生産の移転が起こったのである。最初は中国の安い労賃を目指した移転、そしてベトナムへ、さらにミャンマーへの進出である。アパレル産業も空洞化が進み80年代に染め物工場は1100あったが現在は77しかない。
日本の事務所の減少が著しくなる。91年の655万件を頂点に、2016年には535万件となっている。製造業は1951年、49万件、86年87万件がピークで2016年には45万件になっている。グローバル化とは空洞化でもあった。アパレルの商品は97%が輸入になっている。
【経済開発の諸側面】
経済特区は、鄧小平が中国経済の発展に採用して以来、低開発国の経済成長の大きな手法となっている。タイは2016年東部の3県に新しい経済特区を開発している。1.5兆バーツ(約4.9兆円)を投じて空港や港湾を整備し、進出企業に対して法人税減税などを適用する。外国人に土地所有を認める法案(EEC法案)の策定にも着手している。
マニラのニノイ・アキノ空港は利用した人なら世界最悪のひどい空港だという感想を持つ。4つあるターミナルの接続などを含む開発計画が持ち上がっていたが、6財閥の企業連合が採算の懸念から再投資を求めたところ、政府が拒否した。また22年に6500万人と倍増させる計画も調整中であった。これに対し、フィリピン最大財閥のサンミゲルが、首都マニアの近郊で巨大空港を近く着工する。総額7350億ペソ(約1兆6000億円)を投じる。東京ドーム500個の広さにあたる2400ヘクタールの土地に滑走路を4本敷設。年間受け入れ能力1億人を見込む。建設期間を含めて50年間、サンミゲルが運営する。
フィリピンのひどい交通網のやり方や、空港の過去の敷設を見るとき、今の計画も全体として合理的な計画が立てられているのか不安になる。成功を祈る目で見つめたい。
【世界市場の変化】
1)巨大スーパーと地域の店舗
インド市場は世界最大の市場といえる。当然、この市場への進出は多くの企業を引き付ける。世界小売り最大手、米ウォルマートは2012年9月にインド政府の外資規制緩和を受けてスーパーマーケットの進出を進めようとしているが進まない。2009年に卸売業としてインド進出を果たしている。零細商店の保護を掲げる野党の外資潰しの矢面に立っている。どこの国においても、昔からの小営業者は人間的世界につながる。ジャンジャック・ルソーの描いた近代社会には小経営者の集まりという市民社会の理想があり、フランス革命の市民の原像につながる側面もある。
2)外食産業の海外進出
これまで日系の外食企業が海外に挑戦してきたが成果は大きくない。海外の消費者も下手にその土地に合わせたローカライズした日本食よりも母国日本で磨かれた本物をもとえめている。食は工業品と違い地域性が強いのでグローバル企業は少ない。回転ずしの食材原価は50%を超え、他の外食より20%程度高い。そこでデジタルを駆使したオペレーションの効率化で生産性アップを狙うことが回転寿司店の方向となる。
3)穀物メジャー
世界の穀物メジャーは、米カーギル、米ブンゲ、スイス・グレンコア、丸紅、ガビロンなどである。2012年に丸紅がガビロンを買収している。丸紅は、1970年代にコロンビア・グレインを設立しアメリカで事業展開を行ってきた。
4)中古車販売
求人サイトの「じげん」はケニアで中古車販売サイトを立ち上げている。自動車ローンサービスを提供して中古車販売市場は一括支払いが主流だが、融資の仕組みを構築することでローン販売に乗り出し新規顧客を開拓することができる。支払いが滞った場合ローンを組んだ車両のエンジンを遠隔で止められるシステムを搭載してローンの回収を行っている。
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