投稿

8月, 2021の投稿を表示しています

中国の市民社会の変革

中国は、社会主義国で選挙はない。しかし、中国政府は、中国には中国の民主主義があるとも主張している。民主主義を作るのは、権利の主体となる市民であり、試金石は、市民社会にある。 <一帯一路>  一帯一路というのは新しい商業圏である。商業が広がるところに、市民社会が育つ。しかし、一帯一路はそのように成り得るだろうか。一帯一路はグローバルな展開であり、統一的な市民社会であることはやさしいことではない。一帯一路で生まれる商業圏は、中国の市民社会と民主主義につながるのだろうか。中央アジア、メコン川流域、ミャンマー、南アジア、ベトナム、といった地域が検討すべき対象となる。  新疆ウイグル自治区からキルギスへ至る道路は新しい輸送の道である。キルギスのバザールは中国化している。しかし、中国企業は現地の労働者を雇用しない。そのことに対して、地域の人たちの不満の声もある。  英ジョンソン首相は、一帯一路への対抗策を検討し、G7に提示する。コロナワクチン接種の援助や温暖化ガス排出抑制への提案と抱き合わせて提案する。中国の融資は、「債務の罠」がある。重要施設を担保にとって相手国に貸し付ける。EU諸国では、一帯一路政策を「自由貿易の障害」と批判する声が大きい。一帯一路のプロジェクトの大部分を中国企業が受注し、EU企業が事実上締め出されている。さらに中国政府が知的財産の保護を順守せずに、中国に進出した外国企業に技術やノウハウを開示することを強要する。  日米欧が20年間以上維持し続けてきた中国に対する「関与engagement」政策がある。中国との調和を図る政策である。しかし、中国では権力と資本の癒着に歯止めがかかっていない。中国共産党の高級幹部および党とコネにつながる集団が経済・産業の主要部分を独占的に支配し、富を特権的に囲い込んでいる。 <経済成長>  習近平は2020年の第14次5か年計画などの草案の発表で、「2035年までにGDPと一人当たりの収入を2倍にするかとは可能だ」という見通しを打ち出した。ハイテク覇権に向けた産業政策を盛り込んで、半導体や人工知能を重点科学分野に位置づけている。独自のサプライチェーンを構築することを打ち出している。  習近平氏と李克強氏では、経済政策に違いがあるように思われる。2013年、李克強首相は、政府の関与を減らし、市場の力で...

AI技術を巡る産業: 半導体、電気自動車、携帯電話

AIの商品の主力は、電気自動車と携帯電話である。その2つの商品を巡り多くの技術と商品材料が製造されるという社会全体の生産力構造ができている。AIの中枢は半導体生産にある。半導体は今や鉄に代わる産業のコメとなりつつある。多くの製品の主要部品として製品の心臓部・頭脳部をつかさどる役割を持っている。金融独占資本主義に代わる新しい資本主義の生産力構造の形は、半導体を胴体とし、電気自動車を右腕に、携帯電話を左腕にしてできているのである。 ≪半導体≫  コンピューターや携帯電話など、現在の技術の核に半導体がある。テキサツ・インスツルメントのジャック・ギルビーが発明し、2000年にノーベル賞をもらっている。1958年、ICの基本原理を発明している。  インテルはアリゾナ州チェントラーに新しい2つの工場を建設する。7ナノ以下の半導体を製造する。投資額は200億㌦(約2兆1700億円)である。他社からの半導体製造を請け負うファウンドリー事業をも始める。マイクロソフト、グーグル、クアルコムなどの受注を進めている。   村田製作所は5Gや電気自動車の電子部品生産の工場を建設している。セラミックコンデンサーと呼ばれる電子機器の部品の製造である。一台当たりの部品の数が10倍になっている。スマホで1000個、車で最大1万個を使う。京セラもセラミック部品の生産工場を新設してきた。 ≪携帯電話≫ 【5G 】  ソフトバンクとKDDIは今後10年の基地局整備などにそれぞれ2兆円を投じる。ソフトバンクは2030年までに基地局35万基を整備する計画である。携帯通信の企画はアナログの第一世代が登場したのが、1980年代。10年周期で進化し続けている。5Gは法人向けの通信インフラにする計画である。IoT、オンライン医療、自動運転などの新たな市場を生み出しやすくする。(2020.11.4)5Gの伝送速度は4Gの100倍の毎秒10ギガ(ギガは10億)ビットである。 5Gの通信規格を統一する動きがある。世界市場で共通の危機サービスを広げる技術的な国際標準を決め、国連機関の国際電気通信連合(ITU)で制度としてまとめる。  グーグルは2018年、ピクセルを日本市場に投入した。5.5インチの有機ELパネルを搭載したピクセル3と、6.3インチのピクセル3XLである。アップルのiP...

格差社会はこうして作られる

1980年代までの独占資本主義の時代から、新しい資本主義に移行して、労働者・人間社会の在り方が、階層社会から格差社会に変化したと言える。独占資本主義から得られる利潤と法人税が、労働者の権利と社会福祉を支える前提であった。階層社会は独占資本主義の中で、裕福な層と中間層と体制から外れた階層と低所得の労働者などの階層からなる。この社会は学歴社会でもあり、学歴が階層の基礎となる。学歴によって富裕層、中間層、下層が形作られる。そして、正規の会社員は多数が中間層となり、かなりの人数を占めていた。正社員が社会の中心となった。 その体制が崩壊するとき、中産層が解体してゆく。それが1980年代から90年代にかけての先進諸国の変化であった。正社員層が細り、しかも正社員は独占体制で守られる存在ではなく、大競争の中に投げ込まれていった。膨大な非正規雇用が増えることが、格差社会の始まりを意味する。そして、新しい体制は、その格差を大きくしていくいくつかの要因がある。   ≪原因≫  格差社会を生む最大の要因は、極端な非生産的経済活動部分への富の偏りである。 金融経済に関連した分野、政府と絡んだ特権階級、その他不労所得者層が極端に膨張していっていると言える。そしてIT関連の新しいビジネスは大きな富を生み出し、超富裕層を生み出している。さらに、格差の原因は次のような諸点からできている。 第一に、これまでの独占資本主義体制の崩壊である。独占は独占利潤を前提として富裕階層を作り、労働者の貴族化や中産層を形成していった。階層社会の上位部分を担っていた。その独占の崩壊が、多くの非正規労働を生むことになる。中産層は、非正規雇用化によって縮小・消滅していった。 第二に、金融の巨大化である。金融ビジネスは大きな産業となり、デリバティブをはじめとする新商品を生み出し、あらゆるものを証券化していった。金融分野の超富裕層を生み出すこととなった。 第三に、IT独占の資産蓄積である。GAFAに代表されるような巨大グローバル資本が巨大な富を世界中の大衆から得ている。ITを駆使した新しいビジネスが多数生まれている。 第四に、グローバル化による低価格商品、世界経済の価値格差の影響がある。これによってデフレがもたらされ、低価格商品と低価格労働を生み出している。 第五に、税による直接搾取と特権階層...

悪い税を廃止せよ。健全な国家を!

税は国家の基礎である。国民は国家を作るために自分の収益の中から税を納める。その在り方には原則があり、国家はその上に構築されるべきである。第一の原則は、税制は簡単明瞭でなければならない、ということである。第二の原則は、徴税は、公平でなければならない、ということである。第三に、税は収入の一部から負担されなければならない、ということである。このような税の原則があって初めて国家は国民のものとなる。 【財政の健全化】 財政改革は80年代の土光臨調の時からの課題であり続けている。消費税導入の問題もそれと不可分に議論されてきた。  安倍内閣は、2012年の12月の発足以来、2つの約束を主な政策課題としてきた。一つは、プライマリーバランスを(基礎的財政収支)を黒字化すること、もう一つはデフレ脱却である。長期債務残高は17年末で1037兆円である。今年7月21日、菅内閣は、国と地方の基礎的財政収支黒字化は2027年度になるという見通しを発表した。プライマリーバランスの黒字化目標は先送りを繰り返している。 歳出の抑制と増税では増税による健全化は景気の停滞を長引かせるという研究がある。 政府は、社会保障費の抑制などを進めれば、25年度にゼロとする目標は達成可能と見ている。 プライマリーバランスをゼロにしたうえで、財政破綻を回避しながら巨額の長期債務残高を減らす方向をとる必要がある。財政の健全化は、基本的に財政緊縮を計画的に進める中で行われなければならない。消費税などにみられるような、不用意な増税は格差社会の中で低所得者を圧迫する形で行われてはならない。 【所得税改革】  所得税制度にはややこしい控除がたくさんあり、煩雑を極めている。控除の数が年ごとに増え続けている。さらに統廃合も繰り返しているので、国民に分かりにくい。税が政治的な人気取りに利用されているからではないだろうか?税のわかりやすさ、単純さは「国民のための国家」ということのための要素であるはずである。控除をなくし、低所得者の無税化(例えば、年間所得300万以下の世帯の無税化、年売り上げ2000万以下の小経営の無税化、など)で対応すれば、ほとんどの控除を廃止することができる。同時に税申告の煩雑さが解消される。  ことこれらの対策で、企業の対応を単純化できるのではないだろうか。 大企業は扶養手当などを設けてい...

技術爆発

ベンチャービジネスの興隆と重なるように新しい技術が爆発している。IPS細胞の技術、人口光合成、アルツハイマーなどの治療薬に代表されるような新薬の誕生など。生命科学の発達は21世紀に入って目覚まししい進展を続けている。化学工業の分野でも、有機EL、リチウムイオン電池をはじめ半導体やAIと結びついた技術も生まれている。AI部門の発明や社会インフラも目を見張るものがある。世界は新しい技術が社会全体を変革させる時期が来ている。新しい社会の土台、枠組みが新しい技術とともに生まれている。 【生命科学・医療技術】  第五のがん治療療法と呼ばれる「光免疫療法」に神戸大学医学部付属病院が乗り出した。今年、7月に、光免疫治療センターを開設している。抗体を患者に投与し、近赤外線のレーザー光をピンポイントで照射し、がん細胞を壊わすという仕組みである。  コロナ治療薬は、日本では、エボラ出血熱に使われている抗ウイルス薬「レムデシビル」、免疫疾患の抗炎症剤「デキサメタゾン」、関節リウマチ治療に使われている「バリシチニブ」(今年5月に承認)の3つである。この3つ以外に、適応外の使用、海外での認可、開発中の治療薬候補などがある。しかし、治療薬の開発は時間がかかる。一般的に、実用化には5年以上かかるとのことである。(2021.5.23)  2000年以降に日本の医薬ベンチャーが急増している。各種抗がん剤、アルツハイマー治療薬などをはじめ多くの新薬開発が進んでいる。医薬品などは基礎研究の後、製造販売承認をえるまでいくつかの段階の臨調試験を重ねる必要がある。治験に必要な資金の確保が課題となっている。  アルツハイマーは人間だけの病気である。日本ザイルやアカゲザルの寿命は30年、チンパンジーは40~50年。アルツハイマーにはならない。人間は長寿になりすぎているのかもしれないが、特別な死に至る病気をしないと人間のからだは150年の寿命をもつそうである。アルツハイマーの原因物質アミロイドベータ―が見つかって治療が進んでいる。 【新しい化学工業の分野】 リチウムイオン電池と有機ELパネルは、電気と科学の融合領域である。 スマートフォン関連の素材が高度な技術と結びついて性能を上げている。スマートフォンの上位機種への搭載が進んでいる有機ELパネル向けの発光材料や封止材は、化学工業の技術が提供する。 ...

金融恐慌の時代は克服されたのか。リーマンショック以後金融危機は発生しないのか。

リーマンショックで、金融恐慌の時代は頂点に達した。1971年のIMF体制移行新しい金融が発生し、デリバティブ、証券化、金融工学、ヘッジファンドなどの時代を迎え、金融恐慌が頻発した。「金融恐慌の時代」と言える。2008年のリーマンショックで株価は暴落し、世界の五大投資銀行は倒産、吸収合併され、消滅したかに見えた。しかし、その後まもなく、ゴールドマンサックスをはじめ、投資銀行は復活した。そして、PVファンドなど新たな金融機関が台頭し、新しい金融商品が現れ、新しい金融の時代を迎えるようになっている。しかも、金融恐慌は発生していない。 金融恐慌は乗り越えられる制度が確立されたのだろうか。新しい金融は人類に繁栄と安寧をもたらしているのだろうか。残念ながら今の状況下では肯定的な回答はできない。 一方で、金融の先端国アメリカでは、2010年、金融規制改革法(ドッド・フランク法)とボルカ―ルール(金融機関の自己勘定取引への規制)が効力をあげて金融恐慌は消滅しているという感がもたれる。しかし、その網の目を縫って新しい矛盾が蓄積され、大爆発の危険性も極大化してきているとも言える。大恐慌のあと金融規制が制度化され、1990年前後に、ロバート・ルービン、サマーズ、グリーンスパンらによって規制は撤廃され、自由取引はリーマンショックという金融恐慌に導かれた。その後、再び規制が引かれたが、今度はその規制の網の目を皆具るように新しい影の金融が巨大化してきている。  次のような金融危機の可能性の増大と金融膨張がある。 第一は、高いリスク資産の膨張である。影の銀行と呼ばれる投資会社(アルケゴス・キャピタル・マネッジメントなど)が高利回りの社会を購入し続けている。 第二に、低格付け債の発行である。(ハイイールド債)2021年4半期で2083億㌦(22兆9000億円)が発行されている。その中から、ライジング・スターといわれる格上げされた政権の評価換えが期待されている。 第三に、ローン担保証券(CLO)の発行である。2020年には6623憶ドル(約70兆円)の発行残高になっている。ローンを担保とする証券なので、サブプライムローンの危険性や企業破綻の保険であるCDSの危険性に匹敵するものということができる。 第四に、特別目的配収会社(企業買収のみが事業目的の会社=SPAC)の...

新しい資本主義の主役――GAFAの経済とIT関連巨大企業

 アメリカの下院の司法委員会は、2019年から、GAFA 4社を独占禁止法違反の疑いで調査してきた。2020年10月調査報告をまとめている。委員会は、これらの企業のビジネスの検討の中で、規制強化の正当性を訴えている。また、健全な資本主義的な競争を阻害する巨大独占ということから事業分離も提案している。4社合わせて、時価総額は5兆㌦(530兆円)という巨額に上っている。アメリカの反トラスト法は1890年に始まる。独占の形成と不可分であった。石油産業⇒電話業界⇒米マイクロソフトなど独占者に直面してきたが、新たな巨大独占に対する検討を行っているのである。  アメリカ議会の下院の司法委員会が指摘した問題は次の通り(日経:202010.8)。 フェイスブック:インスタグラムなどの競争上の脅威と認識して買収。膨大なデータを買収やサービスの模倣などに活用 グーグル:検索サービスで「ユーチューブ」などの自社サービスを優遇。基本ソフト「アンドロイド」に自社のサービスを組み合わせることを義務化 アマゾン:出店企業の情報を活用してプライベートブランドを開発。電子商取引サイトなどで自社の商品を優遇 アップル:アプリ配信サービスを独占して高額の手数料を徴収。アプリ販売サービスで自社のアプリを優遇。  いずれも、プラットフォーマーとしての利点を生かしたビジネスモデルであるが、そのような利点自体が独占に基づき、それが独占禁止法に抵触しかねないということに関する調査である。  司法省はグーグルが独占者の立場にあると主張している。米国内シェアの9割。司法省が注目しているのは、スマートフォンメーカーと結んだ<契約>の内容である。米アップルとの間で検索広告から得られる収入を分け合う契約を結んでいる。ネット閲覧ソフト「サファリ」でクーグル検索を標準扱いしてもらっている。グーグルの無償基本ソフト(OS)「アンドロイド」を使う端末メーカーに、グーグル以外の技術を使わないよう求める契約がある。(2020.10.28)このような契約が、市場の競争を阻害する独占にあたるという見解である。 【新しい時代のマーケティングインフラ】  SNSの主な収入源は、広告収入である。フェイスブックの売上高の98%は広告費で2021年の4月―6月の四半期の売上高は、290億7700万㌦(3兆1900億円)である。...

農業問題の諸側面――スマート農業か自然農法か

日本の農業は、日本の農業だけの問題ではない。世界の農業との連携が欠かせない。農業は自然を基本要素とするので、製品管理、輸送、技術開発などの点で、資本主義的に解決しがたい問題を含む。それを資本主義的な技術による克服という視点に立てば、人間本来の自然とのかかわりが破壊されてゆくことにもなりかねない。各国政府は農業に財政援助をする。しかし、それは農業問題の解決からは遠い。農業の関連企業が機械の貸し付けや生産方法の押し付けなどで、農業機械の使用の強制、農民の借入金の増大をもたらすことになる構造がある。農薬使用、化学肥料の使用強制、遺伝子組み換えなどに導くことがある。農民を抑圧し、先進国が世界の農業を収奪するという構造も注意する必要がある。 【地球環境】  地球環境と農林業は密接につながっている。それはグローバルな課題となっている。日本の技術はブラジルの生物の多様性の保全や環境技術の開発、アマゾンの熱帯雨林地域の持続可能な雇用創出に貢献している。違法な森林伐採は自然災害に対処するため、AIを用いた取り組みで協力している。ブラジル政府は、バイオ燃料技術の開発を目指している。サトウキビ由来のエタノールは、CO2の排出量削減につながる可能性がある。 【農業の国際性――サプライチェーン】 世界の農業は結びつけられている。日本のパイナップルはほぼ全量が輸入である。フィリピン産が97%を占める。台湾のパイナップルは中国への輸出が主流であったが中国が禁輸措置をとった。フィリピン産は2020年、年間15万7000トンであった。台湾は2100トンでしかない。中国の禁輸で台湾産のパイナップルは日本市場に入りだした。  インド企業が日本のイチゴ栽培技術を導入している(バンガロール)。日本の農業生産法人がアジアでの稲作生産に力を入れている。稲作を中心に手掛ける「新鮮組」は、タイでビール大手(シンハー・コーポレーション)と8000ヘクタールの水田でコシヒカリを生産し、世界に輸出している。イチゴ生産の秀農業(愛知県)は中国上海市内にイチゴ栽培を手掛けている。特定非営利活動法人のイノプレックスは農業生産法人のインド進出を後押しする。(日経新聞2012.8.20)  キリンホールディングスはベトナムでコーヒー豆栽培をする農園に対する支援を拡充する。ベトナムのコーヒー豆はキリンHDの缶コー...