金融恐慌の時代は克服されたのか。リーマンショック以後金融危機は発生しないのか。
リーマンショックで、金融恐慌の時代は頂点に達した。1971年のIMF体制移行新しい金融が発生し、デリバティブ、証券化、金融工学、ヘッジファンドなどの時代を迎え、金融恐慌が頻発した。「金融恐慌の時代」と言える。2008年のリーマンショックで株価は暴落し、世界の五大投資銀行は倒産、吸収合併され、消滅したかに見えた。しかし、その後まもなく、ゴールドマンサックスをはじめ、投資銀行は復活した。そして、PVファンドなど新たな金融機関が台頭し、新しい金融商品が現れ、新しい金融の時代を迎えるようになっている。しかも、金融恐慌は発生していない。
金融恐慌は乗り越えられる制度が確立されたのだろうか。新しい金融は人類に繁栄と安寧をもたらしているのだろうか。残念ながら今の状況下では肯定的な回答はできない。
一方で、金融の先端国アメリカでは、2010年、金融規制改革法(ドッド・フランク法)とボルカ―ルール(金融機関の自己勘定取引への規制)が効力をあげて金融恐慌は消滅しているという感がもたれる。しかし、その網の目を縫って新しい矛盾が蓄積され、大爆発の危険性も極大化してきているとも言える。大恐慌のあと金融規制が制度化され、1990年前後に、ロバート・ルービン、サマーズ、グリーンスパンらによって規制は撤廃され、自由取引はリーマンショックという金融恐慌に導かれた。その後、再び規制が引かれたが、今度はその規制の網の目を皆具るように新しい影の金融が巨大化してきている。
次のような金融危機の可能性の増大と金融膨張がある。
第一は、高いリスク資産の膨張である。影の銀行と呼ばれる投資会社(アルケゴス・キャピタル・マネッジメントなど)が高利回りの社会を購入し続けている。
第二に、低格付け債の発行である。(ハイイールド債)2021年4半期で2083億㌦(22兆9000億円)が発行されている。その中から、ライジング・スターといわれる格上げされた政権の評価換えが期待されている。
第三に、ローン担保証券(CLO)の発行である。2020年には6623憶ドル(約70兆円)の発行残高になっている。ローンを担保とする証券なので、サブプライムローンの危険性や企業破綻の保険であるCDSの危険性に匹敵するものということができる。
第四に、特別目的配収会社(企業買収のみが事業目的の会社=SPAC)の資金調達が2179億ドルに達している。企業本来の経済活動、価値生産に基づく活動をするわけではないので、投機的な資金運用の一翼を担うと言える。
第五に、暗号資産(仮想通貨)への資金流入が起こっている。2兆ドル(約220兆円)に達する。その代表的なものであるビットコインは言うまでもなく、投機性が極めて強くなっている。
第六に、ファミリー・オフィス(個人資産運用会社=影の銀行、アルケゴスやグリーンシル・キャピタルなど)が巨大化している。5兆9000億㌦の運用資産を持つ。ちなみにヘッジファンドは、3兆6000億ドル、ベンチャーキャピタルは1兆3600億ドルである。
このような金融現象の背景には各国中央銀行の極端な金融緩和による資金提供がある。一国経済の頭で中央銀行はリフレ政策をとり、デフレ脱却の政策を続けている。そこに、巨額の財政支出が重なり、シムズ理論などの緩和を許容・推奨する経済理論で武装している。財政負担を通貨発行で補うという政策をとっていることがグローバル経済の中で、金融膨張という結果になってしまっているのである。中央銀行と各国政府の金融政策の誤りと言えそうである。金融恐慌が到来するまで、中央銀行や政府の金融関連の省庁は起こっている金融恐慌の可能性を自覚することがないと言えるかもしれない。
2018年、5月30日、FRBのパウエル議長は、ボルカ―ルールの緩和を提案した。①トレーディング業務をしやすくすることと、②事務コストを削減する、という意図である。ボルカ―ルールはリスクの原因となっている自己勘定売買を禁止している。そしてファンド出資も禁止している。100億ドル以上のトレーディング事業規模には厳格にルール適応を行いそれ以下の規模の規制の適応項目を免除している。ボルカ―ルールの緩和の動きには、トランプ政権の方針が背景にあった。
中央銀行の第一の役割は、インフレを起こさないような金融政策である。リフレ派の理論やシムズ理論はその原則に反する動きを推奨するものといえる。2%のインフレ目標にしても、デフレの原因への理論的把握、労賃の影響や海外の低価格な生産体制などが顧みられることなく、通貨減少として物価をとらえるというマネタリズムの欠陥の上に政策が建てられているので、いくら金融緩和をしても効果が表れない。そして金融緩和で供給されたマネーは株式市場や社債市場に流れ込み、影の金融活動を生み出す結果となってしまっている。
更に過剰資金は国境を越えて、東南アジアに、投資資金が流入している。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の活動などはそれを助長している。小売商店陳列在庫の状況を把握できるシステムを開発したシンガポールのトラックスや、ネットを使った中古販売のカーロはSVFなどから資金を集めている。フィンテック企業による資金調達は全体の25%を占め、中国のテンセントなどからも資金を集めている。
【低成長の罠】
リーマンショック以後、「低成長の罠」と呼ばれる現象がある。成長を後押しするための先進各国中央銀行は、金融緩和を続けている。資金供給量は、2018年までの10年間で、2008年9月のリーマンショック時の10倍の資金供給量になっている。インフレの危険は上のような諸要素で回避されているが、危険な兆候が出ないか注視する必要がある。
【金融引き締めに舵を切る】
先進国の中で金融緩和を縮小する動きが出ている。ノルウェーは今年後半に金融引き締めに向かう。カナダやニュージーランドは、来年、手引き締めの方向に向かうという観察が高まっている。ロシアやブラジルではインフレ抑制のために金融引き締めが続いている。原油高が物価高騰につながっている側面もある。
2016年3月に導入された、マイナス金利は終わるのだろうか。マイナス金利はあまりに複雑であった。①0.1%の基礎残高、②マクロ加算残高はゼロ金利、③それを上回る日銀当座預金の政策金利残高に、マイナス0.1%を適用するというものであった。不要な複雑な制度は終わらせたほうがいい。金融緩和が誤った経済認識に基づいているので、正しいグローバルエコノミーの認識をおこなえば、適切な金融政策に導くことができる。極端な金融緩和がどのような経済状況をもたらしているかという認識が必要である。金融政策の是正と財政健全化を視野に入れることで、危険な過度な金融緩和は回避される。
【銀行業への参入の傾向】
メガバンクのへの統合はグローバル競争への銀行の対応であった。同時に、様々な業種の銀行、証券業への参入があった。コンビニやITとの連携の時代を迎え、電子決済への動きとともに、アジア諸国で銀行業への参入の動きがある。2017年5月30日にインドネシア財閥のサリム・グループは中堅銀行バンク・イナ・プルダナを買収して銀行業に参入している。
三菱UFJ銀行が仮想通貨を発行に向かって準備を続けている。送金などの金融決済を便宜にする意図で価格を固定するので投機性を排除している。そのインフラを使用して、プラットフォーマーになるという意図が背後にある。
健全の金融システムの発展を願いたいものである。
コメント
コメントを投稿