技術爆発

ベンチャービジネスの興隆と重なるように新しい技術が爆発している。IPS細胞の技術、人口光合成、アルツハイマーなどの治療薬に代表されるような新薬の誕生など。生命科学の発達は21世紀に入って目覚まししい進展を続けている。化学工業の分野でも、有機EL、リチウムイオン電池をはじめ半導体やAIと結びついた技術も生まれている。AI部門の発明や社会インフラも目を見張るものがある。世界は新しい技術が社会全体を変革させる時期が来ている。新しい社会の土台、枠組みが新しい技術とともに生まれている。

【生命科学・医療技術】

 第五のがん治療療法と呼ばれる「光免疫療法」に神戸大学医学部付属病院が乗り出した。今年、7月に、光免疫治療センターを開設している。抗体を患者に投与し、近赤外線のレーザー光をピンポイントで照射し、がん細胞を壊わすという仕組みである。

 コロナ治療薬は、日本では、エボラ出血熱に使われている抗ウイルス薬「レムデシビル」、免疫疾患の抗炎症剤「デキサメタゾン」、関節リウマチ治療に使われている「バリシチニブ」(今年5月に承認)の3つである。この3つ以外に、適応外の使用、海外での認可、開発中の治療薬候補などがある。しかし、治療薬の開発は時間がかかる。一般的に、実用化には5年以上かかるとのことである。(2021.5.23)

 2000年以降に日本の医薬ベンチャーが急増している。各種抗がん剤、アルツハイマー治療薬などをはじめ多くの新薬開発が進んでいる。医薬品などは基礎研究の後、製造販売承認をえるまでいくつかの段階の臨調試験を重ねる必要がある。治験に必要な資金の確保が課題となっている。

 アルツハイマーは人間だけの病気である。日本ザイルやアカゲザルの寿命は30年、チンパンジーは40~50年。アルツハイマーにはならない。人間は長寿になりすぎているのかもしれないが、特別な死に至る病気をしないと人間のからだは150年の寿命をもつそうである。アルツハイマーの原因物質アミロイドベータ―が見つかって治療が進んでいる。

【新しい化学工業の分野】

リチウムイオン電池と有機ELパネルは、電気と科学の融合領域である。

スマートフォン関連の素材が高度な技術と結びついて性能を上げている。スマートフォンの上位機種への搭載が進んでいる有機ELパネル向けの発光材料や封止材は、化学工業の技術が提供する。 電気自動車やスマートグリッド(次世代送電網)に向けで、リチウムイオン電池は電解液に有機物を使う。発火性の危険性がある。1985年にリチウムイオン電池の実用化に旭化成が成功する。91年ソニーが最初の商品化をする。1998-2007年では、日本がリチウムイオン電池関連の特許の66.1%を占めていた。

化石燃料に代わる燃料としては、「水素」が第一であるが、アンモニアが注目され始めている。アンモニアは、マイナス33度で液化するので、水素に比べて運びやすい。水素はマイナス253度で管理する必要がある。アンモニアはコストも安い。1キロワット時23.5円である。水素は97.3円である。東京電力と中部電力が出資するJERAはアンモニアを効率よく燃やす条件を割りだしている。2040年代にはアンモニアの燃焼の実現を目指している。

アンモニアや水素と対照的に、石油やガスの開発投資が縮小している。2020年の投資額は3260億㌦(36兆円)で、再生エネへの投資は3590億㌦である。米エクソンモービルは2021年の油田などの探査・開発投資を160億~190億ドルと25%ほど減らしている。ヨーロッパなどでは、環境保護団体の主張も圧力となっている。

化学工業では、リチウムイオン電池部材ものびている。基礎化学品のエチレンも利幅が広がっている。化学工業は今後、重要度と生産量を増してゆくと予想される。

【半導体競争】

 1985-90年ごろは、日本が半導体で世界をリードしていた。1986年、日米半導体協定が結ばれた。日本は1988年に世界市場の5割を握っていた。NECや日立製作所が半導体メモリーDRAMを安く売っているとアメリカから批判された。日米半導体貿易摩擦になった。アメリカは産官学が手を組み、半導体共同開発組織のセマンテックを発足させた。1989年、東京エレクトロンが半導体製造装置で世界一になっている。

 政治が個別の産業を大々的に支援するのは本来、自由貿易体制で歓迎されない。しかし、半導体に関しては国家が乗り出す。各国が半導体産業に巨額の資金を投じる。電子情報技術産業協会(JEITA)が通産省に提案し、サプライチェーンを政治が指導しようとしている。サプライチェーンは素材、製造装置、設計、生産の各分野まで選ばれた企業が分業する。

半導体の受託生産は各国産業の優位を左右するものとなってきている。習近平指導部は半導体の国産化を国策として進めている。SIMCが中国半導体の象徴的な存在となっている。2020年7月16日に上海の企業向け市場に株式を上場している。500億元の資金調達(7600億円)になる。しかし、世界シェアは今のところ台湾のTSMCと韓国のサムソンが大半を握っている。半導体受託生産は、台湾TSMCや韓国サムソンが競争している。TSMCは売り上げ全体の36%を7ナノ製品が占めている。5Gのスマホに搭載されている。

【ロボット】

 陸海空で活躍するロボットの実験に使う日本最大級の施設「福島ロボットテストフィールド」が昨年から稼働している。広さ約50㌶である。滑走路や飛行場もある。「水中・水上ロボットエリア」などもある。ドローンの実用化に向けた試験を行っている。建設は農薬散布、地形測量、空撮、輸送などの用途に向けた実験である。

≪海外≫

画像認識システム開発の岩根研究所は、道路のひび割れを効率的に発見するシステムをモザンビークの道路公社に納入する。検査技術開発の日東建設は、ナイジェリアでコンクリート強度を確認するハンマーを販売する。(2017.9.25.)日本の技術は世界に広がってゆく。

≪新しいインフラ≫

 原子力発電や化石燃料の発電から太陽光や風力の発電にシフトし始めている。2050年や60年が各国のCO₂排出ゼロの公約の年となっている。その公約に向けた動きが今年本格化してきた。太陽光、風力、蓄電池などの設備を一括して制御し、あたかも一つの大規模は発電所のように機能させる仕組みが必要になってくる。バーチャル・パワー・プラント(VPP)である。再エネ普及のため、2012年に固定価格買い取り制度(FIT)を始めた。政府は約20年間にわたって電力を一定の価格で買い取る。2022年から政府は市場価格に一定額を上乗せして補助する制度(FIP)に切り替える。東芝は仮想発電所を通じて電力の市場調整をするシステムを作り上げている。

 

 インターネット関連のインフラも海底ケーブルや基地局の設置が重要になってきている。新しい社会インフラとなっている。

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