新しい資本主義の主役――GAFAの経済とIT関連巨大企業
アメリカの下院の司法委員会は、2019年から、GAFA 4社を独占禁止法違反の疑いで調査してきた。2020年10月調査報告をまとめている。委員会は、これらの企業のビジネスの検討の中で、規制強化の正当性を訴えている。また、健全な資本主義的な競争を阻害する巨大独占ということから事業分離も提案している。4社合わせて、時価総額は5兆㌦(530兆円)という巨額に上っている。アメリカの反トラスト法は1890年に始まる。独占の形成と不可分であった。石油産業⇒電話業界⇒米マイクロソフトなど独占者に直面してきたが、新たな巨大独占に対する検討を行っているのである。
アメリカ議会の下院の司法委員会が指摘した問題は次の通り(日経:202010.8)。
フェイスブック:インスタグラムなどの競争上の脅威と認識して買収。膨大なデータを買収やサービスの模倣などに活用
グーグル:検索サービスで「ユーチューブ」などの自社サービスを優遇。基本ソフト「アンドロイド」に自社のサービスを組み合わせることを義務化
アマゾン:出店企業の情報を活用してプライベートブランドを開発。電子商取引サイトなどで自社の商品を優遇
アップル:アプリ配信サービスを独占して高額の手数料を徴収。アプリ販売サービスで自社のアプリを優遇。
いずれも、プラットフォーマーとしての利点を生かしたビジネスモデルであるが、そのような利点自体が独占に基づき、それが独占禁止法に抵触しかねないということに関する調査である。
司法省はグーグルが独占者の立場にあると主張している。米国内シェアの9割。司法省が注目しているのは、スマートフォンメーカーと結んだ<契約>の内容である。米アップルとの間で検索広告から得られる収入を分け合う契約を結んでいる。ネット閲覧ソフト「サファリ」でクーグル検索を標準扱いしてもらっている。グーグルの無償基本ソフト(OS)「アンドロイド」を使う端末メーカーに、グーグル以外の技術を使わないよう求める契約がある。(2020.10.28)このような契約が、市場の競争を阻害する独占にあたるという見解である。
【新しい時代のマーケティングインフラ】
SNSの主な収入源は、広告収入である。フェイスブックの売上高の98%は広告費で2021年の4月―6月の四半期の売上高は、290億7700万㌦(3兆1900億円)である。純利益が103億9400万㌦である。グーグルを運営するアルファベットは618億8000万㌦、ツイッターは11億9000万ドル、スナップチャットを運営するスナップは、9億8200万㌦である。
これまでのマーケティングはラジオ・テレビ・新聞・チラシなどの宣伝効果に依存するマスコミ型であったが、宣伝の在り方、意図、効果が根本的な変化を迎えた。SNSを中心としたマーケティングの基本は「自分の興味あるものを見つける」という人々の姿勢である。
中国でも市場の資本主義経済がマーケティングを動かしている。バイトダンスは、2020年12月期の売り上げが3兆円に上った。スマホゲームやネット通販への参入への動きがある。
【IT巨大企業の投資】
いわゆるGAFAをはじめとするIT関連巨大企業は、独特な資本の論理を持っている。一方における「巨大投資」と「勝者総取りの傾向」である。成長期待の高さと短期的収益悪化というジレンマがある。クラウドやモバイル分野の競争が激化する中でインフラ、研究投資、技術者採用拡大といった先行投資費用が巨大になっている。2014年あたりから投資が膨らんでいる。四半期で24億㌦から27億㌦である。年間で1兆円を超える。アマゾンも物流センターへの投資があり、スマホやネット動画用の小型端末機の自社開発のハードウエアの発売など研究開発費が巨額になっている。 装置産業時代の巨額投資がざっくり数百億円から数千億円の設備投資であったものが、IT巨大資本の投資は数兆円に膨らんでいる。プラットフォーマーとしての独占の有利さを確保し、それが極めて高い利潤構造を作っている。市場が巨大化し、新独占を生して収益を上げることという戦略が、ファンドやM&Aなどを駆使した資本の規模の巨大化につながっている。
【新しい資本主義のシステムの誕生】
三菱商事とNTTデータがトレードワルツというオンライン貿易システムを開発している。利用企業は2020年に始まるときは20社、25年には450社になる見込みで、関連企業を入れると5000社にのぼる。
LINEは、6600万人の利用者がいる。主な売り上げは広告で547億円、総売り上げの42%にのぼる。多くのネット企業は広告費が主な収入源で、マスコミの時代からミニコミの時代への変化を象徴する現象である。グーグル、フェイスブックなど、広告企業といえる。バイトダンスは6億人の顧客を持つ。広告収入は1800億元(2兆8000億円)になる。
韓国のカカオも会話アプリ広告ポータル広告などで38%を占める。カカオは広告の収入を基礎に多くの分野に進出している。住宅ローン、送金、自動車ローン、自営業者向け融資などに進出している。調達資金は2兆5500億ウォン(2445億円)である。
金融業界にも新しいシステムが生まれてきている。スマートフォン証券のロビンフッド・マーケッツである。個人投機マネーが集中する「ミーム株」の主役となった。個人投資家が集うSNS「レディット」に「ヘッジファンドに屈するな」という書き込みがあふれた。ミーム株は会社の実体には関係なく、SNSの口コミだけで株価が上下する株である。仮想通貨同様、投機性が極めて強い。
楽天グループが通信網を低コストで構築できる自社技術を、ドイツの通信会社に輸出する。「仮想化」と読む技術の外販である。
<国家対ネット企業>
アメリカでも中国でも、政府はネット企業への厳しい視線が注がれるようになってきている。巨大な市場と媒体を握っている力の大きさ、独占的な地位の確立という事態があり、国家が脅かされる岐路に来ている。ネット企業は、一方で新しい通信インフラによって人々の生活を便利にしているという側面があり、人々の生活の中に浸透している。
中国では、政府の目がネット企業規制に動いている。ネット企業のCEOの退任が続いている。アリババのジャックマー氏(55歳)、ネット通販大手のピンドゥオドゥオの黄氏(41歳)、ティックトックのバイトダンスの張一鳴(38歳)氏などである。中国政府は不正競争や独占的な活動にプラットフォーマーへの監視に目を光らせている。国家と巨大IT関連企業との関係が今後どのようになっていくかということは、世界の在り方を左右するテーマとなりそうである。
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