中国の市民社会の変革
中国は、社会主義国で選挙はない。しかし、中国政府は、中国には中国の民主主義があるとも主張している。民主主義を作るのは、権利の主体となる市民であり、試金石は、市民社会にある。
<一帯一路>
一帯一路というのは新しい商業圏である。商業が広がるところに、市民社会が育つ。しかし、一帯一路はそのように成り得るだろうか。一帯一路はグローバルな展開であり、統一的な市民社会であることはやさしいことではない。一帯一路で生まれる商業圏は、中国の市民社会と民主主義につながるのだろうか。中央アジア、メコン川流域、ミャンマー、南アジア、ベトナム、といった地域が検討すべき対象となる。
新疆ウイグル自治区からキルギスへ至る道路は新しい輸送の道である。キルギスのバザールは中国化している。しかし、中国企業は現地の労働者を雇用しない。そのことに対して、地域の人たちの不満の声もある。
英ジョンソン首相は、一帯一路への対抗策を検討し、G7に提示する。コロナワクチン接種の援助や温暖化ガス排出抑制への提案と抱き合わせて提案する。中国の融資は、「債務の罠」がある。重要施設を担保にとって相手国に貸し付ける。EU諸国では、一帯一路政策を「自由貿易の障害」と批判する声が大きい。一帯一路のプロジェクトの大部分を中国企業が受注し、EU企業が事実上締め出されている。さらに中国政府が知的財産の保護を順守せずに、中国に進出した外国企業に技術やノウハウを開示することを強要する。
日米欧が20年間以上維持し続けてきた中国に対する「関与engagement」政策がある。中国との調和を図る政策である。しかし、中国では権力と資本の癒着に歯止めがかかっていない。中国共産党の高級幹部および党とコネにつながる集団が経済・産業の主要部分を独占的に支配し、富を特権的に囲い込んでいる。
<経済成長>
習近平は2020年の第14次5か年計画などの草案の発表で、「2035年までにGDPと一人当たりの収入を2倍にするかとは可能だ」という見通しを打ち出した。ハイテク覇権に向けた産業政策を盛り込んで、半導体や人工知能を重点科学分野に位置づけている。独自のサプライチェーンを構築することを打ち出している。
習近平氏と李克強氏では、経済政策に違いがあるように思われる。2013年、李克強首相は、政府の関与を減らし、市場の力で経済を効率化する経済政策を採用している。上海自由貿易試験区を設けて、大幅な規制緩和を進めている。広東省、天津市、重慶市など各地に広げている。1978年鄧小平氏の改革開放と結んで、経済特区を1980年に設置した。深圳特区は外資企業が次々と輸出工場を建設した。ものづくりが中国を大成功に導いた。そして今は、サービス業、金融へのシフトを唱えている。
自動車生産の発展は、モータリゼーションをもたらしている。食事や買い物を郊外で楽しむライフスタイルが、2014年ごろから広がっている。イトーヨーカ堂などの大規模小売業も郊外型の大型施設の出店に乗り出した。市中心部の自宅から40分から1時間ほどのところで「農家楽(ノンチャーラ)」と呼ばれるタイプの外食店がある。さらに郊外には、鹿の肉や山ガエルの特別な料理の農家楽もある。
2018年には、習近平氏は、自動車産業の外資規制をすべて撤廃する決断を下している。これまで出資の上限を50%としていたのが、2022年には全廃になるとした。しかし、米中対立の影響や電気自動車生産などもあって急激な変化が起こることもある。
中国の近年の経済成長は、新エネルギー車、工業用ロボット、半導体生産などが押しも上げている。さらに、工場建設マンション建設への投資が拡大している。
【コンビニ】
ファミリーマートやローソンなどは、2004年に中国でフランチャイズを始めている。2003年12月11日以降、流通分野の開始規制緩和策としてFCを解禁した。外資100%の出資でFC本部を設立することが可能となった。
日本風の商品や店づくりで成長してきた中国の雑貨店大手、名創優品(メイソウ)がニューヨーク証券取引所に2020年に上場した。世界80超の国・地域で4200店を展開している。ちなみに、日本のユニクロは3600店、無印良品は1000店、ダイソーは5700店である。
【2013年ごろ】
大学の新卒が2013年、700万人で、日本の10倍である。80平方メートルのマンションに40人が共同生活し就職活動に努力している。1日の賃料は25元(約400円)。就職競争の激しい波がある。このころ大気汚染がひどくなっていた。PM2.5である。石炭火力の影響と自動車が増え続けていることが大きい。政府は約28兆円の費用で大気の質の改善に努めている。
交通システムの無整備も重要課題となっていた。李克強首相は、高度成長を追求せず構造改革を進める経済政策をとっている。規制緩和や中間層を基盤とした消費型社会への転換である。
<党-軍-市民>
中国の政治体制は、軍との関係が重要な要素となっている。陸海空とロケット軍の4軍の各司令官のポストや装備発展部長が政治体制に大きな要素となる。軍掌握を加速させる習近平国家主席の主導でこの人事が動いている。国防省の装備発展部長の李尚福、ロケット軍司令官の周亜寧氏なども習近平氏のとの接点があるとみられる。「政権は銃口から生まれる」といわれる中国では、軍の統帥権を握ることが最高権力ポストを握ることである。江沢民は国家主席を退任した後も2年間、軍事委主席について院政を敷いた。
<中国市民社会と民主主義の可能性>
権力・軍=武力・企業などの体制が強権を支えているとしても、同時に、経済活動や市民的な報道機関、新聞、ラジオ、テレビなど、新しい市民社会の要素も育っている。人権を尊重する弁護士も多数活動している。その中から、党支配、軍統制、企業特権的支配に対する新しい体制が生まれる可能性はある。香港や台湾ウイグルチベット問題と中国国内の諸矛盾は起爆剤になる可能性を持っている。肝要なことは、体制構築への理論的政策提案ではないだろうか。民主主義を吟味しながら、合理的な体制への改革の提案がカギとなってくるのではないだろうか。
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