中央銀行と通貨
【中央銀行の役割変化】
新しい金融の変化が到来している。中央銀行の役割も時代の変化の中で変容してきている。もともと、中央銀行は、国の信用制度の中で最後の切札、政府の銀行として存立していた。その中で金融政策を担い景気変動を安定的に保つこと、発券銀行として通貨の量を調整し安定的な経済状況をもたらすことを使命とした。特に、20世紀の独占の時代、管理通貨制度の時代になると、インフレを抑制する役割が第一の役割であった。
現在では、役割が多様化して、中央銀行が行うべきでないことにまで、中央銀行に期待する錯誤が発生している。政治が中央銀行の役割に過度な要求を突き付けているのはトランプ政権、安倍政権の誤謬であった。それは政府の財政政策の行き詰まりの反映でもある。
金融緩和への期待が景気刺激と財政膨張を生む。その結果、中央銀行の試算膨張が膨らむ。FRBの保有資産は8兆㌦になった。不健全な状況である。
【日銀のETF買い入れ】
日銀が保有する株式の時価が10兆円を突破した。日本株に連動するETFを年3兆円回増している。2013年に年1兆円購入すると決めた。日銀が最大の日本株式の所有者となることで、株価の高騰を招いているが、富裕層を富ませ、低所得層をさらに貧困にすることになってしまっている。不自然な株価操作となっている。株式相場を支えることは日銀の健全な役割とはいいがたい。異次元緩和に伴い日銀は国債も年80兆円のペースで買い増している。
【地方銀行】
地方銀行はその中で変革の波にさらされている。不良債権処理に備える。引当率は、平均0.2%である。8割の地銀が引当率1%未満である。コロナで金融が危機をも変える中で、引当率の低さは危険性のがけっぷちという印象がある。巨大銀行はゆとりがある。JPモルガン・チェースなど米5大銀行は、引当金の取り崩しなどで62億ドルの利益を計上した。一時的な景気悪化しても景気の回復期に戻すことができるのである。
横浜銀行ときらぼし銀行は、今年、8月26日、中小企業向け融資で業務提携する、と発表した。コロナの影響で中小企業の事業再編や資本増強のニーズが高まるためである。ストラクチャード・ファイナンスと呼ぶ分野である。LBOや資本性劣後ローンを取り入れる金融操作手法である。
【国際金融監視組織】
「金融活動作業部会」(FTTF)は39の国と地域が加盟し、190以上の国・地域のマネーロンダリング対策を勧告する国際組織である。重点フォローアップ国には、米国、カナダ、中国など約20カ国ある。多くの国が監視強化の対象となっている。2018年に愛媛銀行から総額5億円を超える資金が香港経由で北朝鮮に流れる事件が起きたとされている。金融組織の監視に関してはもちろん国内でも強くなされている。金融庁の銀行への指導がある。世界的な対応が強化される流れは、世界金融制度の統一への動きといえる。
金融システムの変化がある。スマートフォンを活用した新たな金融サービスやサイバー攻撃の中で情報管理の重要性が高まっている。金融庁も金融監督の役割が広がっている。リスクの目を早期に検知できる仕組みをつくろうとしている。それに対応した監視体制を国際的に行う必要からFTTFの活動もあると思われる。
【中央銀行のコロナ対策】
日銀はコロナ支援のためにいくつかの対応をとっている。まずは①低金利の延長である。短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%にしている。②ETFの買い入れ上限を年12兆円とし、③CPと社債の買い入れを合わせて20兆円としている。政府系金融機関による無利子・無担保融資の申込期限を年末まで延長している。このような融資によって倒産などはある程度回避されているが、どのような波紋が発生するか、今後、注意する必要がある。
欧州中央銀行(ECB)の総資産が7兆ユーロ(880兆円)に増えている。国債の大量購入・通貨発行の増大による。政府の給付金は「消費」より「貯蓄」に回っている。潜在的需要は低い。ECBは、物価目標を2%とし、一時的な物価の2%越えを容認する姿勢をとっている。インフレのある程度の容認で需要を喚起しようとしている。コロナ危機対応の資産購入の特別枠を総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)としている。
【通貨膨張】
コロナ禍で、米国をはじめ多くの先進国がおカネをばらまいた。金融緩和と財政政策で通貨の供給量(M2、現金と預金)は1年余りで5兆㌦も増やした。マネーは株価を押し上げたが低所得層は失業にあえぐ。格差が増大していることを、FRBのパウエル議長は問題視している。世界の通貨供給量は、1971年以降のIMF体制の崩壊から50年で、GDPの6割から1.3倍に膨れている。1日当たりの為替取引額は、6.6兆㌦と30年前の12倍になっている。
マネーの力に頼る国では、極端なインフレが起こっている。レバノンのベイルートの食料品店では「1日に何度も値上げしないとやっていけない。」という状況である。通貨レバノンポンドの闇相場が生まれ、公式レートの10分の1となり、輸入頼みの食料品価格は8倍になっている。
2020年、米中対立の中米ナスダック市場では中国企業の締め出しに動いた。中国企業の米市場での調達額は、2018年1兆円に達したが、20年には5か月で1千億円台に減っている。
【民間が国の制度より先に進む】
フィンテックは、金融と情報通信技術(ICT)の融合である。ATMを使うよりも、銀行アプリを操作する機会のほうが多くなっている。外部とのデータ連携を可能にするAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)化し、他の事業でも本人確認の結果を利用できるようになりつつある。スマホによる支払では、ユーザーとの接点であるアプリは、ICT企業が提供することが多くなっている。
フィンテックが巻き起こす金融の変化の潮流は「インクルージョン(包摂)」と「民主化」という概念で言い表せる。「包摂」は銀行口座を持たない人々に金融サービスを提供することで、「民主化」は、金融業ではなく情報産業の組織や個人が金融とそのルール作りに参入することである。ブロックチェーン(分散台帳)の技術では万人が送金記録を検証する。マイナンバーカードよりも、フィンテックから生まれた技術である、ICTのほうが一層の革新を迫られている。民間主導の技術を政府の制度が後付けしてゆくということになりそうである。
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