自民党総裁選挙と衆議院選挙
【菅義偉首相 不出馬】
菅義偉氏の総裁選不出馬の発表で、衆議院選挙を控え、各派閥と国会議員、そして野党も動きを活発化した。日本の政権は短期の政権が多い。一貫した政策が政権を担うことと繋がっていないことが、大きな原因である。それは日本の政治制度、選挙制度そのものの根の深い問題でもある。この点は、改革が必要なのではないだろうか。国を安定させ長期的視野に立った政策運営は不可欠であるのであまりの短期の政権はさけたい。大平正芳氏や小渕恵三氏のように死亡による政権終了はやもえないが、福田康夫氏、安倍氏の2度の政権放棄に続いて、今回の菅氏の場合も政権放棄といえる。その他に、羽田孜、宇野宗助、村山富市各氏の政権は極めて短命であった。社会的混乱につながりかねない。首相の重荷はあるにしても、責任の希薄さと長期的視野の欠如、政治的使命感の薄さによるものと言わざるを得ない。
岸田文雄氏は、菅氏不出馬の遠因を作ったともいえる。自民党の体制に関する提言が若手をはじめとした自民党議員の動きにつながった。岸田氏は、総裁選に出馬する意向とほぼ同時に、コロナ対策に関する政策を発表している。さらに全面的な政権構想は、一つずつ検討して発表してゆくとされている。あとの、候補者は政策を発表していない。野党も政策提案は極めて弱い。特にコロナ対策は最大の緊急課題であるが、どの候補者も党も有効な提案をしていない。
菅内閣は、基本路線は安倍内閣を受け継ぐということであったが、安倍政権の継承につながる政策の提示がほとんどないままであった。細田派の支持を得るための発言だったのだろうか。菅政権が進めた政策は、デジタル庁の創設、子ども庁の創設、携帯電話料金の引き下げ、地方銀行改革、などであったと言える。それらは、ほぼ達成できている。しかし、コロナ対策の失敗、オリンピック・パラリンピック開催に伴うコロナ感染の爆発など、失敗が目立った。財政健全化は大きな課題で、外交面は積極的な方針は特になく、目立たない対応であったと言えそうである。
【選挙の焦点としてのコロナ対策】
今回の衆議院選挙の焦点は、コロナ対策である。政府は、すでに2021年の予算の予備費から新たに1兆4226億円をコロナ対策に支出すると決定した。追加ワクチン購入に8415億円、治療薬の確保に2315億円、緊急小口資金や緊急雇用安定助成金等に、2390億円ほどがあてられる。21年度予算は111兆円を超え、20年度補正予算は175兆円で30兆円が繰り越しになっている。繰り越し分では公共事業に4.7兆円Go to Travelなど観光振興策に1.3兆円となっている。
立憲民主党は、コロナ対策費として、さらに補正予算を30兆円、増額することを衆議院選に合わせた政策で提案している。
コロナ対策は何よりも、人流を抑制することが重要なはずであるが、その対策は与党も野党も立てていない。
【無党派層の増大】
無党派層が35%になった。(2021.8.6)安倍政権発足した2012年以降、30%越えることが多い。1強で、特に政策論争がないこと、安倍政権がいいわけではないけど、野党を支持する根拠が乏しいという、消極的承認といった政権支持の内容である。政策論争がほとんどない。消費税の撤廃や原発廃止の具体的実効、武器輸出の禁止といった対立点をはっきりと主張すれば、若者の政治的関心は戻るのではないだろうか。そして党としての長期的視野からの提案が無党派層取り込みには不可欠である。もちろんメディアの変化という社会的背景はある。新聞・テレビなどのマスコミの衰退とSNSの普及が政治的無関心と無党派層の増大の背景としてある。ミニコミとネットでニュースに触れる世代である。負の側面としては、フェイクニュース、デマが流れ、人々は刺激的な虚偽(フェイク)のニュースに走りがちであるということがある。
アメリカでは、選挙をめぐる論争では、哲学、方針、政策が第一である。日本はそれを軽視するという悪癖がある。菅義偉総理大臣は哲学も方針も不確かなまま、各派閥の政治的利害で、国家元首になったと言われる。当初、そのような性格が国民の支持を得た。庶民的、国民に寄り添うという姿勢で支持率を上げた。その後、方針の欠如は実行力の欠如として表面化し、支持率は急落した。
【選挙と国家体制――日本国家体制の特徴】
選挙は国政を左右する。そして国政は国家体制を左右する。2001年から、官僚制が揺らぎ官僚内閣制といわれた状況から、官邸の力が大きくなり、内閣が政治の実行につながる制度が整ってきた。
戦後日本の国家体制の一つの特徴は、通産省にある。それを大きく評価・賞賛する人とほとんど無駄であったという評価をする論者がある。
通産省は産業全体を指導し、てこ入れする役割を担う。日本資本主義の原動力と考える人がいる。1962年に特定産業振興臨時措置法を巡る騒ぎが起きた。通産省の企業第一課の両角良彦課長の発案である。政府、産業界、金融界が強調し、ワンセットで傘下に持とうとする発想である。新日本製鉄の誕生も当時の大平正芳通産大臣が努力した案件である。1967年に国際競争力を持つという観点からの合併に、公正取引委員会への打診を含め、日本興業銀行が絡んでいる。石炭合理化計画も57年から延々と80年代まで通産省の指導のもと進められている。57年は年間7200万トン、62年5500万トンといった目標が占めされている。その後、時代の傾向として石炭生産は衰退していく。
現時点では、イノベーションを進め、脱炭素などの目標にあった政策を推進している。発電などのエネルギー政策は、その中心課題である。
しかし、産業の力となるには技術開発の現場分析による競争力が重要である。豊かな社会を決めるのも政策的な方向性提言もあるが、同時に技術がどの様に製品化につながるかということも重要である。アメリカでは政府主導でなくても戦力的な操業育成に成功している。 一つの政府の検討材料としては、具体的な提案を政府がするよりも、ダムはどれくらい必要か、公共事業の利点と弊害の可能性。脱炭素を巡る政策の意義や利点、AIの高揚に関する政策的な検討、哲学、人間の福利といった点からの政府の方向性の提示することが政策論争にも反映されるべきである。そのうえで、産業は力を自ら発揮するという方向があり得る。
【ポピュリズム】
2016年は、ポピュリズムの年であった。グローバリズムの広がりが巨大資本を生み出す一方で国家という政治の枠組みが、グローバルな舞台との緊張関係を持ち、それに反発するように国家という単位でのポピュリズムが台頭した。ポピュリズムは、カリスマ的指導者が議会や政党を迂回して、有権者に直接訴える新しい政治戦略である。既成政党やエリートを批判する政治運動でもある。下からの運動といえる。排外主義と結びついた民族性や人倫性に依拠する側面がある。日本では、極めてポピュリズムの要素は少ない。
【官邸主導の国家体制】
内閣法制局は、一つの政府の要である。立法は国会でおこわわれるという、民主主義の原則が、日本の国家体制では崩れている。立法の90%以上が、内閣法制局が担っている。法律案は各省の官僚からの提起がほとんどであったが、そこに官邸の意向が入るようになってきている。
官僚制を国会中心の民主主義を通す制度としては、内閣官房と内閣府が政府の意向で動くという側面で官僚制に歯止めをかけることができた。内閣府ができた2001年には、内閣府と内閣官房の合計人員数は2800人である。12年に3166人、2020年委は3677人になっている。改革人事局で官僚の上層600人の人事権を握ったのが2014年である。政党の政策や遺構が国政に反映できる国家体制に発展してきたと言える。
政治主導の体制には、小選挙区制と政党助成制度によって確立してきている。小選挙区比例代表並立制ができたのは1996年で選挙が官邸主導の体制と結びついてつくられた。大きな政治改革であった。
今回の衆議院選挙では、政策論争が弱いように思われる。2001年以来の国会の機能と官邸の機能、政党の存立意義の試金石は、なんといっても政策論争を選挙の中で活発化し国民の意志を選挙に反映することころにある。是非そのような政党の姿勢・状況を望みたいものである。
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